ランデヴー
「ん?」


「あの……」


ギュッと陽介のジャケットを掴んだまま俯き言い淀む私の顔を、陽介が優しい瞳で覗き込み「何?」と問い掛ける。



そんな陽介に、私は意を決して口を開いた。



「あの、ね。写真……撮ってもいい?」


「写真?」


「うん……2人の、記念」



今日、私はデジカメを持ってきていた。


写真を2人で撮ったことは1度もない。



でも……だからこそ、2人の思い出を残したかった。


最後かもしれない、2人の思い出……。



嫌だ嫌だと言いながら、私は自ら心の中で『最後の』と考えてしまっている。


それは、私達が2人で過ごす時間が最後なのか、それとも2人でデートができるのが最後なのか。


自分でも良くわからないが、今日のこのデートを悔いのないように過ごしたかった。
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