ランデヴー
「プリント、しないから……データだけ、大事にとっておきたいの。ダメ、かな……?」


陽介の瞳をじっと見つめて、懇願する。


ジャケットを握り締める手に力がこもった。



陽介は最初そんな私を不思議そうな顔をして見ていたが、必死な様子がおかしかったのかクスッと笑みを浮かべた。



「ダメな訳ないだろ? 別にいいよ、写真くらい。撮ろう」


陽介のその言葉に、ホッとすると同時に嬉しくて目の奥がジーンとする。


ダメだと言われたらどうしよう、と思っていたから。



私達にとって、残ってしまうものはタブーだ。


人に見られてはいけない、メールだって残してない。



でも、写真を残せる。


こっそり、データとして残しておくことができる。



こんなにも楽しい2人の時間が、確かに存在していたんだということ。


夢なんかじゃない、と。


そう考えるだけで、体中を喜びが駆け巡った。
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