ランデヴー
朝陽介の姿を見るだけで、その日1日頑張ろうと思えた。


たいした用事ではなくても、仕事の件で陽介と話せるだけで嬉しくて心が弾んだ。


いつもその姿を盗み見ては時々絡まる視線に、ドキドキと胸をときめかせた。



2人きりで会える時間が少ないが故に、私には毎日が新鮮だった。


陽介との逢瀬はいつも色褪せることなく、鮮やかに私の心に焼き付いている。


自由に会えないからこそ、2人だけの時間は余計に私の心を幸福で満たしたのかもしれない。



同時に、陽介もそうだったのかもしれない、と思う。


会えない間のもどかしさが切なさを生み、お互い恋い焦がれる。


そして2人きりになると寂しかった気持ちが溢れ出し、より濃密な時を過ごしたいと思うのだ。



いくつもの陽介の笑顔や温もりを思い出して、キュッと胸が痛くなった。


あの楽しかった日々はどこへ行ってしまったのだろうか……。


一緒に過ごした日を思い出そうとすればする程に、泥のような重い気持ちが全てを掻き分けて顔を出す。
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