ランデヴー

＜それはほんの予兆＞

その日、私は課会で突然告げられた仕事で、地下の倉庫へ行くはめになっていた。



チーフの榊原さんは、いつだって唐突に仕事を言いつける。


忘れていたのか、大した手間ではないと思ってるのか。



「明日監査が来るから、この書類揃えといて」


と、平然と言ってのけるのだ。



それぞれの項目ごとに3種類の書類が必要なそれは、今現在地下の倉庫に保管されているものだった。


何でもっと早く言わないんだろう……という言葉をグッと飲み込み「はい」と返事をするしかない私は、やっぱりしがないサラリーマンだ。



私はこの課で1番社歴が浅いし、派遣社員の女性がいなくなってからファイリングなどは必然的に全て私の仕事となっていた。


確かにその分厄介な案件は榊原さんと大地さんが負担してくれていたけど、それでも雑用は止めどない。


日々溜まっていく書類に容易に手を着けることはできず、それすらも放置されていた。
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