ランデヴー
「坂下さん、どう?」
「忙しいです」
「いやいや、そうじゃなくてね」
課長の佐原さんが、忙しく手を動かしている私に構わず話しかける。
彼は課長だけど、いざという時にしか出てこないから何だかいつも暇そうだ。
それでも邪魔されるよりはいいのに、こうして無駄に話しかけて来る。
陽気なオジサンという感じで、嫌いではないが……正直ウザいと思うこともしばしば。
「倉橋君って歌って踊れるアイドルグループにいそうじゃない?」
「何が言いたいのかわかりません」
無表情でそう答えると、佐原さんは何だかとても嬉しそうな顔をした。
「坂下さん、彼氏いないでしょ?」
「……佐原さん、セクハラです」
「えぇ! こんなのでもセクハラになっちゃうのぉ!?」
大仰に驚く佐原さんに、思わず溜息を吐く。