花は野にあるように
大きく踏み出した長い足で、力強く地面を蹴ったリョクの身体がふわりと宙に舞う。


そう思った次の瞬間には、リョクは菊を置いてあった台を飛び越えて、その向こうのコスモスの花壇へと降り立っていた。


「………リョク?」


急な行動の理由がわからなくて、僕はリョクの名前を呼ぶ。


だけどリョクは僕の呼びかけには答えてくれずに、俯いて地面に視線を落としていた。


「………ミキ、あった。」


短い沈黙の後。


リョクは僕に向かってそう言ってから、腕を地面の方へと伸ばしていく。
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