花は野にあるように
飛び出して行こうとした僕の肩に、リョクは抱き締めるように腕を回して。


そして、額が付いてしまうぐらいに顔を近付けた。


「あのさ。
ヤマゲンは今日はもう帰っちまったし。
でもって、この菊も後で俺が必ず心配しなくていいようにするからさ。
だから、騙されたと思ってくれてもいいから。
ちょっと、落ち着いてくれよ、な?」


そんな至近距離から、僕の目を覗き込んだリョクに言われて。


そして。


「俺の事なんて信用できない?」


なんて囁かれて。


「………ううん。」


僕にはそうとしか答えられなかった。
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