花は野にあるように
そう話しながら、リョクは僕の手の中から殻をそっと取り上げる。


「ま、明日までは花壇の中に、こうやって逆さに立てておこう。
残ってる白身も無駄になるよりは土に還る方がいいだろうしな。」


そう言ってリョクが花壇の中に逆さに立てた卵の殻は、なんだか小人の家が並んでいるみたいな可愛い景色だった。


「コロボックルのおうちって感じだね。」


ふふっと笑いながら僕が言うと、リョクも嬉しそうに笑った。


「お。
ミキも好きなんだ?
俺も好きだったなあ。
みんな、本名は草木の名前なんだよな。
チビの頃親父に、それがどの木でどの花なのかよく教えてもらったよ。」
< 1,057 / 1,416 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop