花は野にあるように
握っている手首に力を込めたのか、おじさんの顔が一瞬いがむ。


傍で見ているだけの僕まで、なんだか怖くてドキドキしてしまう。


おじさんは顔を引きつらせたままで、片手でぎこちなく名刺を取り出した。


その小さな白い紙片を引ったくるように取り上げたリョクはちらっと視線を走らせて、ニィッと獲物を見つけた虎みたいな表情になった。


「へぇ?公務員なんだ?」


そう言うリョクは笑っているのに。


なんだかとっても怖かった。
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