花は野にあるように
でも。


「結局、あれから一度も掛けたことないんだよね。」


画面に向かって呟くと、液晶画面を意味もなく、ストラップについているクリーナーで拭いてみたりする。


力を入れた場所だけが、変な形に歪む画面と向き合った僕は、窓を叩く雨の音に気持ちを押されるように、ストラップを放した指を発信ボタンにかけた。


ドキドキする。


べ、別に特別な話をする訳じゃないっていうのにね。


なのに僕の鼓動はなんだか勝手に早くなってしまっていて、ものすごくドキドキするのが止まらない。


なんだか、息まで苦しくなりそう。
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