花は野にあるように
せ、せめて、ちょっと落ち着こう。


僕は片手を胸において、大きく深呼吸を繰り返した。


「よ………よし!」


無意味な確認なんかしてみたりして。


でも、グズグズしていたって時間が過ぎちゃうだけだよね。


ええいっ!


思いきってボタンにかけた指に力をこめて押し、そしてうるさいぐらいに跳ねる胸を押さえながら、僕はケータイをそっと耳に当てた。



本当は多分、ほんの一瞬だったんだろうけど。


ケータイが壊れちゃって、発信してくれていないんじゃないかって思ったぐらいに僕には長く感じられる沈黙の後。
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