花は野にあるように
『ミキ?』


耳元に、僕の大好きなその低い声が聴こえてきた時、僕は自分からリョクに掛けたクセに。


「リ、リ、リ、リョクッ!」


ものすごくどもりながら、ただリョクの名前を呼ぶだけの第1声を放ってしまっていた。


うわーん、僕のばかぁ。


初めての電話で、いきなりこれじゃ、なんだか怪しいじゃないっ!


『んん?
ミキ、どうかした?』


そんな僕の狼狽を知っているみたいに、耳元で囁くリョクの声が優しく訊ねてくれる。


その声を聞いているだけで、うわうわとなっていた僕の気持ちは落ち着いて来ていた。
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