花は野にあるように
僕の言葉に、リョクはちょっと驚いたような表情になって僕を振り向いた。


「………あんな雨の中だったから、迷ったり悩んだりしている時間はなかったんだよね?
せっかくおじさんが煮出して作った虫除けを捨てちゃいけないなんて、本当はリョクが一番わかっているような事だものね。」


そうだよね。


たくさんのハーブを炊き込んで作るおじさんの虫除けのホントの価値を僕なんかよりもっともっと良く知っている筈のリョクが、それでも他の容れ物に移し替える事が出来なかったぐらいに大変な事態だったって事なんだものね。
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