花は野にあるように
話す言葉の吐息が、頬にかかるぐらいの近くから聞こえるリョクの声は、僕の鼓動を勝手に早くしてしまう。


「ここが鍵穴だな………ミキ、この穴に奥まで入れてから回してみて?」


僕のドキドキを煽るような言葉をわざと選んでいない?


けど、そんな風に思っちゃう僕の方がヤラシイのかな。


なんて思いながら。


うるさいぐらいに大きな音を立てる僕の胸にそっと左手を重ねて。


僕はリョクの手に包まれている右手を伸ばして、緑陰に隠されていた鍵穴へと鍵を合わせた。


差し込んだ鍵は想像したよりも簡単にカチャリと小さな音を立てて。
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