花は野にあるように
さや、と頬に触れた風が思っていたよりも冷たくて。


「え?」


思わず僕の口からそんな言葉が転げ落ちる。


だって。


不思議に思いながら視線を上げた僕の目に映った景色って。


張り出した屋根の下に、大きな岩をくりぬいたような10人ぐらいは楽に入れそうな湯船。


そうして、その先にはさっき横を通ってきた庭園がまるで描かれたように収まっていて。


ね?


ここって、ホントに温泉旅館じゃないんだよね?


そう確認したいのに。


でも確認してしまって、その答えがどっちでも、やっぱり嫌かも。
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