花は野にあるように
その手につられるように、僕も庭の方へと顔を向ける。


言われてみれば、確かにいつも学校で見ている西の庭園と、ここから見える理事長先生の家の庭にはどことなく共通点があるようにも見える。


「言われてから見たからかな?
樹木の配置の感じとか、確かに似ている気がするね。」


「ん。
造園設計した奴とガッコの本館を設計した奴は一緒で、この家を含めたこのあたり一体を所有していた旧華族の最後のひとりでさ。
財産失くすわ、家脈は断つわのろくでなしなんだけどな。」


向こうをむいたままのリョクの声が湯気と一緒に穏やかに漂ってくる。
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