花は野にあるように
「………ゲホッ、ぅぐ……。」


吐き気はなかなか治まらなかった。


吐くものは、もうないはずなのにまだ。


込み上げてくる吐き気に、僕は息を乱して、苦しくて涙を浮かべていた。


「大丈夫かっ!」


背中を撫でてくれるリョクの掌から、薄いシャツ越しに伝わってくる熱さがとても気持ち良い。


その熱は、少しずつ。


僕の気分を落ち着かせてくれていた。



「これ使えよ。」


ようやく、手洗い場で口を洗うことが出来た僕に、リョクが自分のスポーツタオルを差し出してくれる。


おひさまの匂いがするそのタオルに顔を埋めると、泣きたくなるぐらいに僕はホッとした。
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