花は野にあるように
「もう……平気か?」


僕の上着とネクタイを手渡してくれながら、リョクが尋ねてくれる。


うん。


………多分。


まだ、少し自信のない僕はリョクを見上げて頷く事で答えた。


でもリョクは心配そうな表情のままで、僕を見ている。


「……電車に乗れるのか?」


ためらいがちに尋ねるリョクの口から、『電車』の言葉が出た瞬間。


情けない事に、僕の身体はビクリと大きく反応してしまっていた。


あのキモチワルイ感覚が、また戻って来てしまいそうで。


僕は、あわててリョクのタオルを口に押しあてた。
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