花は野にあるように
「………リョク?」


名前を呼びながら見上げている僕の頭に、いつもとおんなじあったかい掌を置いたリョクは目を細めて、微笑んだまま少し首を傾げる。


「んんん?
そんな表情してどうした?」


穏やかな低い声にそう訊ねられて。


僕の中に湧き出していた感情が急激にふくれあがった。


「ぼ、僕も頑張るからっ!」


感情に突き動かされるように、僕の口からは言葉が飛び出す。


「だから、一緒に頑張ろうよ!」


そう訴えた僕の頭を、リョクはくしゃりと撫でて、今度は本当に嬉しそうな笑みを浮かべた。


それは、僕が一生忘れられなくなるぐらいに素敵な笑顔だった。
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