花は野にあるように
「ふっ……んっ!」


鼻に掛かった声が僕の口から零れ落ちると。


もう、声を我慢することは出来なくて。


「あ………ぁんっ!」


身体中から甘く力が抜けていくような感覚に、逃げたくなる身体をリョクに捕まえられたままで、僕は押し殺した声をあげた。


「ふ………ぁ……」


リョクの唇から与えられる痺れるような感覚から逃がれたくて、小さくいやいやと首を振る。


だけど、そんな事でリョクは僕を解放してくれたりはしなかった。


ぎゅうっと閉じた視界の中、リョクが僕に落としているキスの音と、自分の息が段々と荒く乱れてきているのを聞いているだけの僕の耳に。


外の廊下を歩く誰かの足音が聞こえた。
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