花は野にあるように
『何が、イヤなの?』


鏡の中の僕が、そう言って笑う。


『好きなものは好きって。
欲しいものは欲しいって。
ちゃんと言えば良いだけなのに。』


鏡の中の僕はそう言って、自分からリョクの顔を捕らえて、舌を伸ばしながらキスをねだった。


「やっ……。」


それを見たくなくて、目を閉じなきゃと思うのに。


僕はどうしても、目が離すことができなくて。




「あんな、キスが欲しいんだ?」



リョクがそんな風に囁くぐらい。


瞬きもしないでただ、じっと。


見つめていた。
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