花は野にあるように
「何を怖がることがある?」


リョクは静かな声で僕に尋ねた。


「何が怖い?」


僕を抱き締めるリョクから、熱い体温が伝わってきている。


その温度が、僕の身体の奥にまで伝染ってきて深いトコロに火を点けたような気持ちだった。


その火が燃え上がってしまったら……。



もっと僕は今までの僕から、かけ離れてしまうような予感がした。


「怖いよ。」


僕の中にいる、僕が知らない僕が。


「なんにも、怖がることなんてないさ。」


そんな風に囁いてくれたリョクの声は、さっきまでの意地悪な声音じゃなくて。


とっても、優しかった。
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