花は野にあるように
「そ。
ようやくわかったみたいだな。」


ふふっと笑うと、リョクは僕を抱き締めていた腕を緩めて、僕をリョクと向かい合うように座らせた。


「まだ……怖い?」


僕と視線を絡ませて、リョクが優しい笑顔を浮かべながら尋ねてくれる。


ふるる、と首を振って返事の代わりにすると、僕は近付いてくるリョクの口付けを受けるために目を閉じた。



触れるだけのキスをして。



やわらかく僕を抱き締めたリョクが僕の耳に囁く。


「まだ……怖くない?」


その声の響きに、僕はぞくりと身体を震わせる。
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