花は野にあるように
そんな風に言いながらも、靴を替えてくれたので、僕は他の生徒があまり寄り付かない場所へと案内することにした。


朝は静かな雨に包まれていた、花があふれる中庭を抜けて、奥にある目立たない木戸を開ける。


「ここを抜けないと裏庭には出られないから、ほとんどの人はこの先に庭が続いている事を知らないんだ。」


案内しながら僕は説明する。


黙って周りを見回しながら付いてきていたその人の表情が、木戸を見たときにだけ少し動いたように見えた。


「へぇ。こんなの作ってたんだ。」


そういう口調は、なんだか意外に軟らかいものだった。
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