花は野にあるように
そう言うと。


理事長先生はくるりときびすを返して立ち去ろうとした。


その背中に向かって、僕は思わず。


「ま、待ってくださいっ!」


声を掛けてしまっていた。


「……何か?」


顔だけで振り向いた理事長先生の視線が僕を見る。


「あ、ありがとうございますっ!
リョクの為に尽力していただいてっ!」


僕が言うべき台詞ではないんだろうけど、どうしてもお礼を言っておきたくて、僕は叫ぶように言った。


「お礼を言われるような事ではありませんよ。」


そう、短く言い残すと理事長先生は足早に歩き去っていった。
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