花は野にあるように
「キスしてもらえるんなら、バカって呼ばれたっていい。」


本気なのか、冗談なのかわからないような事を言って、リョクは身体をかがめて僕に迫ってきた。


「んー。」


唇をとんがらせながら、両目を閉じて待っているリョクを見ていると、僕はなんだか怒っているのが馬鹿らしくなってしまった。


「……………馬鹿。」


口の中で呟くようにそう言うと、僕はうるさいぐらいに大きな音を立てている心臓が飛び出してしまわないように胸を押さえながら。


少しだけ伸び上がって、リョクの意外にすべらかな頬に。


そうっとキスをした。
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