花は野にあるように
もう、ずいぶん前に授業は始まっていて。


なんだか静まりかえった中庭は、けだるい貴婦人みたいな雰囲気を漂わせながら、ライラックの薫りのなかに色とりどりのバラを咲きほこらせていた。


その中に入ると、授業も受けないで何をしているの?っていう、花達からのお叱りの声が聞こえてきそうな気がする。


「ゴメンナサイ。
でも、リョクを捜しに来たんだ。
どこに行ったか知らないかな?」


いつもお弁当を食べるベンチにも、リョクの姿を見つける事が出来なくて、僕は花達に尋ねた。
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