花は野にあるように
お酒の匂いをさせながら、近づいてくるリョクの唇が何だかいつもより紅く艶めいて見えて。


どきん、とした僕はリョクから顔を背けた。


「ぼ、僕は誰にも言ったりなんてしないけど………。」


動揺したのを知られたくなくて、口籠もりながら僕は答えた。


「なら、大丈夫だ。」


くす、と笑いながらリョクは座りなおしてカップの中身を飲み干し、池の水を半分ぐらい汲んで池の上に浮かべると、ついっと池の真ん中にむかって押し出した。
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