花は野にあるように
透明なカップはゆらゆらと揺れながら池の真ん中に向かって小さな船のように進んでいく。


水面に軌跡を描きながら進んでいる、木漏れ日にきらめく小舟は揺れるたびに池の水を取り込んで、少しずつ水の中に飲み込まれて。


そうして、しばらく進んだところで、口のトコロまで一杯になってしまったカップはとぷん、と小さな音を立てて池の中へ吸い込まれるように沈んでいった。


代わりに浮かび上がった水紋が、微かな波となって僕達の方へと帰ってくる。


「ねぇ?………なにかあったの?」
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