花は野にあるように
「やっぱ、感じやすいじゃん。」


リョクにくすり、と笑われて僕は熱くなった顔をふいっと窓の方へと向けた。

遠くに見える山の影がやけに濃い緑色に僕の目に映る。


そしてそれは、ほとんどその位置を変えないまま、僕達を迎える用意をしているような気がした。


そんな僕の首筋から、顔全体を撫で回すようにして、リョクは手にした薬をまんべんなく塗りたくり。


僕は皮膚の上を走るリョクの掌や指に、あらぬ感覚を呼び起こされそうで。


少し早くなっている心臓の鼓動を、リョクに気付かれませんようにと、必死で祈っていた。
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