花は野にあるように
なんだか。


他の人に見られているかもしれない電車の中だって事をすっかり忘れ切っていた僕は、リョクの声がまた耳元で囁かれるまで、リョクの方へ身を乗り出した格好のまま、ぼうっとしていた。


「もう……薬は塗りおわったんだけど?」


笑い声の気配を消すことなく言われた、リョクの言葉が僕の浮遊していた心を呼び戻す。


自分が、リョクに向かって物欲しげな表情をしていたような気がして。


僕の顔が一気に熱くなった。
< 316 / 1,416 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop