花は野にあるように
山の稜線に縁取られた額縁の中で、一瞬ごとにその色の深さを変える青い空と。


歌うように微風にそよぐ山百合達の描きだしている、絵画のような風景に絶句したまま、ただ。


立ち尽くしている僕の肩に、リョクの手がそっと乗せられた。


「頑張って登って良かっただろ?」


耳元から聞こえるリョクの低い声に、僕はまだ心を景色に捕われたまま、コクリと頷いた。


うん。


ありがとう、リョク。


この僕を、君の秘密の花園へ招待してくれて。
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