花は野にあるように
「こんなに綺麗な花園だけどさ。」


低く響くリョクの声が、やわらかく僕の鼓膜を揺らす。


「摘み取ったり、掘り起こしたりして違う場所へ持って行くと、こんなに鮮やかな色じゃなくなるんだ。
だから、この風景はこの場所でしか、見られない。」


ここでしか。


見られない色。


見られない光景。


それを。



「リョクと見られて良かった。」


泣きたくなる程の感動で胸がいっぱいの僕は、それだけ言うのが精一杯だった。
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