花は野にあるように
「僕の名前はね、苑生 美樹。」


リョクに聞かれてもいないのに、僕は顔を上げられないまま自分の名前をリョクの名前の下に書いた。


「美しい樹って書いて、よしきって読むんだ。あんまり、男っぽくない名前だよね。
ずぅっと昔からミキって呼ばれつづけたし。
だから、僕、あんまり自分の名前好きじゃないんだ。」


苑生(そのお)って名字は嫌いじゃないんだけどね、と続けようとした僕は、地面に名前を彫り込んでいた手をリョクに捕られて言葉を飲み込んだ。


「え?
………リョク?」
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