花は野にあるように

覗き込むようにして僕の顔に近づいてくるリョクの顔の上に前髪が影を落としていることに、なんだかドキリとしながら僕はふるる、と首を振った。


「ううん。
全然そんなことないよ。
っていうか、なんだかすっごく美味しいんだけど。
何か特別な物入ってるの？」


口の中の渇きが治まって、それでいて爽やかで、ほんのり舌の上に自然な甘味を感じさせて、なんだか魔法の水みたいなソレが何なのかは興味があるけど、全然嫌だなんて思ったりしないよ。


「ん？
これか？
親父がいつも作ってくれていた山登り用特別ドリンク………っても、なんにも特別なモンは入ってないぜ？
レモンの絞り汁に蜂蜜と水とが入っているだけだし。」