花は野にあるように
そう、頼み込むように言われてしまって。


リョクの電話は、僕の手のひらの中に押し付けられてしまった。


「んじゃ、行ってくるな?」


軽い調子でリョクは言い。


リュックから取り出したロープを、たすき掛けにして崖の方へと向かう。


「き、気を付けてね。
お願いだから。」


そう声をかける僕を振り向いて、かっこよく親指を立てて見せるとリョクは。


立ちはだかる壁みたいな崖に手をかけて。


するすると登り始めた。
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