花は野にあるように
「それ、親父だよ。」


ちょっとだけ、照れながら。


リョクはそう言った。


「蒼弓の蒼いっていう字に、波って書いてソウハ。
跡取りの一人娘のオフクロと結婚するために養子に入ったから、大地蒼波。
それが、今の親父の名前。」


僕が握りしめていた手をスルリと引き抜いて、目の前の空間にリョクの指が描き出す文字を僕は見つめた。


そっか。


リョクのお母さんって、リョクのお父さんの事を名前で呼んでるんだ。


可愛い感じで、すっごくいいなぁ。


なんて思うと、自然と僕の口元に笑みが浮かんだ。
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