花は野にあるように
なんだか少し泣きたくなりそうな僕だったけど、リョクの胸に抱かれていると本当に心が落ち着いてきた。


リョクの身体からは森林のような薫りがしていて、僕は息をする度に、その薫りを吸い込む。


2月にしては暖かい、太陽の日差しを背中に受けてリョクに抱かれていた僕は、小さい頃にキャンプに行ったときの事を思い出していた。


あの時は初夏だったけど、今日と同じように暖かい日差しが僕の事を照らしてくれていて、湖の上を渡ってきた風が木々の薫りを運んでくれて、僕に安らいだ気持ちをくれた。


「リョクって、おっきな木みたいだよね。」
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