花は野にあるように
まだ少しぼんやりしたまま、無造作に手を伸ばした僕の様子にクスリ、と小さく笑みをこぼしてリョクは。


「熱いんだから、気を付けろよ?
火傷しちまうぞ?」


そう、声をかけながらミニタオルにくるんでコップを僕の手のひらの中に握らせてくれる。


タオル越しでも感じられるコップの熱と、立ち上る湯気から香る美味しそうな匂いが、じわじわと僕の頭をさまよっていた夢の世界から現実へと引き戻してくれた。


「はふ。」


意識しないまま、小さく欠伸をした僕はふるる、と頭を振って眠りの残雫を振り落としてリョクを見た。
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