花は野にあるように
そんな風に僕がぼんやりと考えていた間にも、リョクのお父さんは歩みを止めることなく近付いて来ていて、もう、すぐそばに現れていた。


そして、持っていた荷物をその場に置くと、両手を広げて僕に向かって駆け寄って来た。


「ミオさんっ!」


僕のじゃない名前を呼びながら、僕の事を抱き締める。


えっ!


な、なに?


どうしてこうなるのっ?


あまりにも予想外な出来事に、僕は声も出せないままで太い腕の中へ閉じ込められてしまう。


「ミオさん。」


またその名前で呼ばれながら、僕は広い胸に顔を押し付ける形で抱きしめられていた。
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