花は野にあるように
「ん?
どうかしたか?」


僕の事を緩く抱き締めていてくれたリョクがそうっと覗き込むようにしながら尋ねてくる。


「む、む、む、胸っ!
胸があるよっ!
リョクの胸っ!」


口をパクパクと無駄に開け閉めした後に、ようやく出てきた僕の言葉は。


そんな意味をなさない言葉だった。


でもリョクには、そんな言葉でも通じたみたいで、少し照れたように目の縁を赤くして、あぁ、と答えてくれる。


「骨にヒビが入ってるからってコルセット巻かれちまってさ、その上からさらし巻くと、暑いし蒸れるんだ。」
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