花は野にあるように
「………やっぱ最高に可愛いよな。」


くす、と小さく笑ってリョクは僕の肩を抱くと池に背を向けさせ、そのまま小径を逆に辿るように中庭の方へと歩いて戻り始めた。


「もう、しねえよ。
情欲に負けてお前を襲うなんて、誓いに反するからな。」


ビクリ、と身体を固くした僕に気付いてリョクが言う。


肩を抱かれたときにリョクの指が触れたトコロから、ぞわりとした感覚が生まれた。


それを押し殺そうとしたのをリョクはそう解釈したみたいだった。


「………どうせなら昼飯持って来りゃよかったよな。」


派手にお腹を鳴らして、おどけて言うリョクの言葉には僕への気遣いがいっぱい込められていて、それが僕にはとっても嬉しかった。
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