花は野にあるように
「は、花時計、お願いしますっっ!」


思いきって言ってしまおうと、僕が発した言葉に理事長先生は一瞬止まった後、ゆっくりとまばたきをして。


そして、もう一度僕を見てから、すくっと立ち上がった。


なんの言葉もないままに、急に立ち上がった理事長先生に、僕もなんにも言えなくて、沈黙の帳が降りた部屋の中に、窓の方へと歩いていく理事長先生の衣擦れの音だけが響く。


「紅茶はお嫌い?」


僕に背を向けたままの理事長先生から、突然言葉を掛けられて、僕はビクリと跳ね上がった。
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