花は野にあるように
コトリ、と小さな音を立てて、僕の前へ置かれたカップからは、とても芳しい薫りが立ち上っていた。


「本来ならばソーサーで蓋をするべきなのですが、カップの上にソーサーを乗せることに拒否反応を見せる方もいらっしゃるので、そのままにしています。
よろしければ、2分程そうやって蒸らしてはいかがです?
薫りが引き出されますよ。」


理事長先生のその言葉に素直に従って、僕はティーカップの上にソーサーで蓋をする。


カチャン、と音を立ててソーサーを乗せた時に、今の言葉を聞いたのは初めてじゃないことに気がついた。
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