花は野にあるように
その視線が、とてもやわらかいような気がして、僕はガチガチに固まっていた身体からすうっとちからが抜けていくのを感じた。


僕ってばものすごく、緊張していたんだね。


握ったこぶしを開いてみて、そこがしっとりと汗で濡れてしまっていた事に僕は苦笑いを浮かべそうになる。


それをごまかすように、僕は下に戻したソーサーの上に、丁寧に滴を切ったティーバックをのせてから、カップを持ち上げた。


「いただきます。」


そう言って、カップに口を付ける。


ふわり、と立ち上る薫りが僕を包みこんだ。
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