花は野にあるように
「あなたは、園芸部の為に私のところへ来たのでしたね。」


僕を真っ直ぐに見ながら、訊ねてくる理事長先生に頷いて返事をする。


何を訊かれるんだろう?


「でしたら、この花に見覚えはありますか?」


理事長先生はそう言って壁際に置かれた、大人の腰までぐらいの高さがあるキャビネットの上に置かれた花入れを指し示した。


土そのものの色を深めたような外見の、丸い柱状の筒になっている花入れに、僕は見覚えがあった。


この花入れは信楽焼だぞ、って。


今朝、リョクから聞いたばかりだったもの。
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