花は野にあるように
「……ゴ、ゴメン………。」


リョクの胸の中に抱き留められた形になってしまった僕は、恥ずかしくて顔が上げられないまま小さく謝罪した。


「……大丈夫か?」


ぎゅっと軽く抱き締めてくれた後、優しく尋ねてくれるリョクの口調は少し甘くて。


僕はそのまま瞳を閉じて抱き締められていたいような気持ちになっていた。


「こら、ガッコ行くぞ。」


含み笑いを隠さずにリョクはそう言うと、僕の肩に手を添えてきちんと立たせてくれた。


「ほら。」


言葉と一緒に伸ばされたリョクの手が嬉しくて、散歩に飛び出す子犬みたいに僕は、その手に飛び付いた。


………でも僕ってば家の前で何してるんだろう。


誰かに見られてると恥ずかしいのにな。
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