花は野にあるように
僕の家の最寄駅から学校までの電車は、いつもすごく混んでいる。


大きなターミナル駅同士を繋ぐ線の途中から途中までだから仕方がないんだけど。


「今日もまた、すごい混雑だよね。」


ホームに滑り込んできた電車の内を透かし見て、僕は小さくため息をついた。


「心配するな。お前の事はちゃんと護ってやるから。チカンからも、混雑からも…な。」


リョクが少し頭を下げて僕の耳にそう囁き、鞄を持つ僕の手に、そっと掌を重ねてくれた。


その手は大っきくて、あったかくって、そうしてとても。


安心できた。
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