花は野にあるように
リョクのあたたかい存在を背中で感じているだけで、息苦しくて嫌いな満員電車の中にいるのに、なんだかほんわりとした気持ちになれるんだ。


どうしてかな。


僕は身動きも出来ないぐらいにぎゅうぎゅうと詰め込まれた電車の中で、のんきにそんな事を考えていた。



車内の熱気で曇ったガラスの向こうで動いていた景色が、段々とその速度を緩めて電車は次の駅へと到着した。


ここでも、またたくさんの人が乗り込んでくる。


……そう言えば、昨日の朝リョクの事をチカンと間違えちゃったのも、この駅を過ぎてからだったよね。
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