にょんさま。
「どうなの?」
雛子が真面目に聞いてきた。ぱっちりした瞳に長い睫毛。柔らかくカールした髪が揺れる。
以前、雛子が四季に「雛子ともデートして」と冗談のように言っていて、それを四季は「ダメ。ごめんね」とかわしていたことがある。
その時の雛子の言葉は軽い気持ちではなかったのだ。
四季に可愛いと思ってもらいたい雛子の思いは、雛子の姿に表れている。
だけど──。
「私、四季が好きだよ」
「……」
「本当に好きなの」
きっぱりと胸の内が言葉になっていた。忍自身、その言葉が自然に出てきたことに驚いた。
本当に好きなのだ。
「そ」
雛子の反応は意外にあっさりしたものだった。
「それならいいんだけど」
「それより、指輪見てもいい?」
まりがさっきから気になっていたように、切り出した。
「うん」
指輪を外す。まりは指輪を手にとって「いいなー」と羨ましがった。
「私も彼氏にお願いする〜」
「あームリムリ。揺葉さんはもらえても、まりはムリ」
「何それ。超しつれー」
どつき合っている。あはは、と周りが笑った。
「揺葉さん」
教室の出入口の方で、先生に呼ばれた。
「ソロがある人達の楽譜、取りに来て」
「はい」
取りに行ってくるね、と言い残して忍はその場から離れた。
*